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#二人ぼっち

―――

夜が苦手だった

眠ることが苦手だった

明かりも差さなくて
隙間風が抜けていく
そんな部屋の中で、一人

身を寄せて、ありもしない熱を求めなければならないから


そんな、ある日


知らない大人に手を引かれ
別の場所に移って、少しした頃

目の前に、一人の男の子が現れた

黒い髪を1つに括って
爪を緋色に染めた彼が

ただ、来たからと何をする訳でもなく

傍に座って
美容の本を開くだけ

それで、いつの間にか寝た後
何事も無かったように、日の出と共に去っていく

普段から関わりはなかったし
何がしたいのか分からなくて、少し怖かった

けれど、それが少しずつ日常になって
少しずつ、怖くなくなって

気付いた時には、彼の寝顔を見る時間が少なくなっていた

不思議だった
どうして、君は僕の元を訪れるのかと


「...............似たようなもん、だったから」


...そんな言葉を、聞いた時からだっただろうか


彼と話すようになって
自分でも自覚するほど、笑顔が増えた

完全にあの頃の感覚が消えた訳ではないけれど

夜の時間も、眠る事も
彼が傍に居ると思うと、安心できた

彼と二人ぼっちの夜は
妙に心地が良かった

3/21/2026, 11:20:33 AM