雫
ぽたりと、おちる音が聞こえた。
はて、私は一体何を落としたのだろうか。
要らないもの?大切なもの?形のないもの?
はたまた、自分自身とは言うまいな、自らを害することがどれだけの大罪か、知らない私ではないのだから。
気付くと、私の周りには壁が出来ていた。
乗り越えることも出来なくはないが、少し面倒な、そんな高さの壁。左右を囲まれて身動きが取れないでいた。
しかし、足元は動くようだ。風が通っているのを感じる。
少しづつ視界も開けてきた。灯りが点いたようだ。目を閉じていてもチクッと刺すような感覚を抱く、蛍光灯の光だ。正面から降り注いでいる。
ほんの少しの狭さを感じるこの空間に、どこか懐かしさを覚える。何度も見たことがあるのだろう。何故だか少し心地が良い。
けれども、何時までもここにいる訳にはいかない。
ここから抜け出す術も、分かっていた。
ゆっくりと身体を起こす。
未だ副交感神経が優位なようだ。気怠さが残っている。
もっと安定した環境で休みたかったと後悔する。自業自得だと非難される。自らの性質を故に言い訳する。
寝付きも悪く、寝相も悪い。
そんな私は、知らぬ間に意識を落とし、ベッドから体を落としてしまったらしい。
「お前は水じゃないんだからさ、落ちた時の音も凄まじいわけ。迷惑被ったのはこっちなんだけど?」
ぼとっ、と落ちる音が聞こえた。
4/21/2026, 1:30:21 PM