「ふぁあ……」
重い身体を起こすと、心地好い温もりが身体に絡まって来て、それを見つめる。そこには愛しい恋人が無防備に眠っていた。
すやすやと安心した表情が愛らし過ぎて、思わず頬をつついてしまう。一瞬、眉間に皺を寄せて片目が少し開いた。俺を見たかと思うと、ふにゃりと笑顔になってから俺の腕にしがみついて眠りにつく。
スマホを探して時計を見ると、昼を過ぎていた。
昨日は夜勤で、帰って眠ったのは朝方だったから、そんなに眠ってはいない。
でも、起きようかな……。
彼女は俺に合わせて起きてくれていたから、ここぞとばかりに一緒に眠った。とはいえ、変な時間まで眠ると昼夜逆転しまう恐れがある。
「そろそろ起きよう」
彼女の耳元に口を寄せてそう囁くと、首を横に振りながら俺の身体にしがみつく。
「起きない?」
「もう少し、ゆっくり休んで欲しいです」
「昼夜逆転しちゃうよ?」
その言葉に反応し、目をこすりながら身体を起こして、その大きな瞳が俺をとらえると彼女の両腕が向けられる。
それが何を示しているのか理解している俺は彼女を正面から抱きしめた。
気持ちが落ち着いたのか、ゆっくりと身体を離す。
視線が合うと、ふにゃりと力のない笑顔を見せてくれた。俺もつられて口角があがる。
ベッドを抜けてカーテンを開くと、太陽の光が部屋に入って明るくなる。昼も過ぎたのだから当然だ。
「あ……」
「どうしました?」
「いや、見て」
彼女に手を差し伸べると、彼女もベッドから抜け出して俺の手を取って窓を覗く。俺もそれに習って外を見つめた。
朝では無いけれど、それでも普段見えない山々まで見える景色に、彼女も息を飲んでいるのが分かる。
「いつもの風景が少し違って見えますね」
「晴れた上に冬の空気でよく見える」
「はい!」
家からの景色だけれど、季節が変わると眺めが変わって見える。
彼女を見つめると、俺の視線に気がつくから同時に笑ってしまった。
おわり
二三四、冬晴れ
1/5/2025, 2:12:36 PM