灯火を囲んで

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本当に耐えられない。
腸が熱をもって、じゅくじゅく波打っている。
痛みはもちろん、強い不快感が全身を襲った。

多くの人は経験したことが無いだろう。
腸がひくひくと痙攣しながら流動している感覚を、ありありと感じるなど。
晩飯は無論食えなかった、好物のオムライスだったが、ダメだった。
そういう事が最近多くて嫌になる。
病に人生を乗っ取られている。
胃も連動して締め付けられる。ジリジリと痛む。
あぶられているようだ。
もはや全身が痛い、内蔵の痛みに耐えられない。
締め付けられる。痛む。
変な耳鳴りがする、胃がねじれる。
やぶける。人間のもろさを身をもって感じているのだろうか僕は?
痛む。痛む。痛む。
痛みます、とにかく。痛み、ます。
は、は、は、しかし息ができる。
病は気から、前向きでいなければ……
落ち着いた方が良い。腸は第二の脳である。
ダメだ、痛む。痛む。痛む。
痛覚だ。とにかく痛覚が全身を包んでいる、痛む。

自業自得、自業自得、自業自得。
自業自得。

痛みます、うう、人の声が響く。
空気が臭う。
夜空がまぶしい。
バイクの音。暴走族がふかす。
ふかす。
道路を滑走する重い車体たち。
ハイビーム。ハイビーム。ハイビーム。トンネル。

長いトンネルの話を思い出す、暗く長いトンネルを通る人生、いつかは抜けられると言っていた。
そうだ。僕は夕方から夜にかけてが1番ひどい。
朝になれば、ずっとマシだから。

眠れない、夜が長いと忘れていた。
胃が痛いよー!痛いよー!痛いー!
痛い。痛い。痛い……
汗が出る。じわりじわりと汗が出る。
寒いのか、暑いのか、わからない。楽な姿勢を探す。ない。ない。
だめだ、これは、だめだ。痛い。
見つけた。楽な姿勢があったので、楽になる。
眠る。

他責思考だろうか。病は治せる、病院に行かなければならない。
行かなければならない。
だが、病院までの道のりは寛解までの道のりと同じほど遠かった。

僕の青春。
僕の青春。青春は遠くにある時きらきら光る。
誰かが苦しいとき、誰かはもっと苦しいと思う。少なくとも僕は死なない。とても痛くて、へんな気分なだけだ。
毎日たくさんの薬を飲まなければならず、注腸フォームの使い方を知っているというだけ。
特に哀れな僕ではない。というか、人に哀れまれる事自体こそが屈辱的な事だと思う。
もし僕が治療のために入院し、そこへ友達が来たら、僕はその日の事を一生忘れられないだろう。
いつも僕の隣で笑っていた友人たちが、僕を見て顔を暗くする様子。
なんと声をかけていいか迷う様子。僕だったら間違いなくそうなってしまう。親しい友人がそんなふうに入院してしまったら、間違いなく。
友人たちは僕の姿を病人のそれだと確信するだろう。
そして、早く元気になってと言うのだ。
僕は頷く。いつものように振舞おうとするが、友人たちの空気に気圧されるのだ。
考えすぎだろうか?
しかし、なくはない未来である。

10/24/2025, 1:40:19 PM