小鳥遊 桜

Open App

【何もいらない】

今日も、兄さんのために家事をする。
まずはセールで買ったものを使ってご飯作らないと!

あ!こんにちは!久しぶりだね!元気??

はじめましての人もいるのかな?
じゃあ、あらためてちょっとだけ自己紹介!
僕、家庭環境最悪過ぎて…大人だし思い切って家出しようって思って、橋の下生活をしてたの。
まあでも、すぐにバイトなんて見つからないし、金欠すぎて食べ物なくて倒れる手間になったの。
そんな時に、兄さん…血は繋がってないから……兄さん(仮)?に出会って、今は兄さんと生活中。

あきらさんっていうんだけどね。
それに、すごく優しいの。


そうこうしてる間に、もう19時。
そろそろ兄さんが帰ってくる。

『おい。帰ったぞ…また夕飯作ってくれたのか?めんどくさいだろ。』
「えっへん!どーぞ、食べて食べて!僕の自信作!それに…僕、居候だし。兄さんのために出来ることは、なんでもするよ!」
『りお、兄さん言うな。全く…はやく食べて寝るぞ。』
「はーい!」


兄さんは、ツンデレなんだよね。
言葉遣い悪いかもしれないし、表情分かりにくいけど、今日はいいことあったみたい。良かった〜。



ご飯とお風呂終わってのんびりして…その後は、兄さんが中古で買ってきた2段ベッドで寝る。
あ、ちなみに、僕は下の段で兄さんが上の段。
朝ごはん作りがあるから、上の段だとちょっと大変なんだよね…だから兄さんに無理言って上の段で寝てもらってるの。
兄さんは『飯なんていらねえから。ゆっくり休んでろ。』って言ってくれるの!
ツンデレ兄さん好き!


『何ニヤニヤしてんだよ。はやく寝るぞ。』
「はーい!おやすみ、兄さん。」
『ん。』


今日も、終わる。
この生活があれば、何もいらない。


部屋…くらいなあ……
元々の生活に、戻りたくない。
夢に、出てこないで。怖い。
お願い。
おねがい……


『なあ。起きてるか?』
「えっ…う、うん!どうしたの?」
『明日、魚、食べたい。無理ならいい』
「うん!兄さんからのリクエスト嬉しいなあ!頑張って作るね!」
『……おやすみ。』
「うん。兄さん、おやすみなさい。」


明日が楽しみになった。
さっき考えてたことも、全部忘れちゃった。
兄さんは、やっぱり、すごいな…

よし!
明日は、頑張って魚料理作ろう!





┈┈┈┈┈┈┈┈

『むにゃむにゃ……』
「むにゃむにゃってなんだよ。変なやつ。」

俺は、小声で文句言って、そっと起きて部屋を出る。
そして、小さな鍵を使って鍵付きの引き出しに隠していたタバコを持って、外に出る。

こいつは…りおは、タバコが嫌いみたいだから。コンビニに捨てに行く。

最初は、ベランダでタバコを吸ってたんだけど、吸い終わって部屋に戻ると、りおはタバコの匂いで何かを思い出したかのように、小刻みに震えてた。
…無理して、笑ってた。
短い期間だろうけど、同居人が嫌な思い出を思い出すなら、禁煙してタバコは捨てる。

「嫌な思い出は、そう簡単に消えない。」

そう言って、ゴミ箱に捨てて急いで帰る。起きてたら、めんどくさいからな。

この日常が、いつか終わることはわかってる。
けど、りおと生活した思い出は、忘れたくない。

この思い出があれば、何もいらない。

4/20/2023, 11:44:50 AM