薄墨

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ジャックは彷徨っている。
ジャックは彷徨っている。僕を騙したから。

僕にいじわるをしたジャックは、地獄にすらいけなかった。
だからジャックは彷徨っている。
真っ暗な闇の中を彷徨っている。

だから僕はあげたんだ。
ジャックの記憶の灯火を灯した、カブのランタン。
本当はどてカボチャにしたかったけど、あまりいい色がなかったからね。
僕はジャックにあげた。記憶のランタンを。
こうしておけば、ジャックはいつでも記憶を辿れる。
永遠にひとりぼっちでも、自分を忘れてしまうことはない。
これでジャックは大丈夫。

でもジャックは大丈夫じゃなかった。
ジャックは変になっちゃった。
だから僕は頭を取り替えてあげることにした。
灯を持っていても迷ってしまうなら、いっそ灯を頭にしてしまえばいい。

ちょうどその日はカボチャがいっぱい。
僕はとびきり上等なカボチャでとびきりかっこいい顔を作ってあげた。

そうしてジャックの頭につけた。
ジャックの記憶のランタンを。
ジャックの頭は悪魔特製記憶のランタン。
これでジャックは大丈夫。

こうしてジャックは彷徨っている。
ジャックは彷徨っている。僕を騙したから。
記憶のランタンの頭をふりふり、ジャックは今日も彷徨っている。

11/18/2025, 12:53:49 PM