潮鮫

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君の頭が弾けた。「ぽん」と。


素敵だと思った。
もう二度と見られないのが酷く残念に思ったよ。


動かなくなった君の体は歪に血を這いずっていて、
その姿に魅力は感じないけど。



君は顔が良かった。
カメラを構えるのは僕の仕事。

瞬間が大事、って言葉が君は口癖だったよね。


ふとした顔、唯一無二の驚き、写った影も
一度逃せば再現は不可能だ。







だから、撮ったんだよ。
僕は瞬間を映す人なんだから、あんなシーンは
フィルムにも、僕の瞳にもよく焼き付けるべきだと。


夜もふけて、火の近くでカメラに触れる。

見開いた目、薄く開いた口に厚い下唇。
形の良い眉と、切り揃った前髪。
黒子や薄くかかった前髪は君の顔をより引き立てる。


そして、側頭部から噴き出す血。

色鮮やかに透け、まるで彼岸花のように
芸術的な形を魅せている。



これは宝だ。
何にも変えられない。
色褪せない。


刹那の君を閉じ込めた、僕だけの大事な宝物だ。

4/29/2024, 3:45:31 AM