喜村

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一年後の私へ、

 この手紙を読めているということは、きっと病気に打ち勝てたんだね。
 余命半年といきなり言われて、びっくりしちゃったよね。
 この手紙は、遺書と一緒の袋に入れているけれど、これを読んでいるのは、一年後の私かな?
それとも、親族の誰かかな?
 私だったらいいけれど、親族がこれを読んでいると思うと恥ずかしいな。

 一年後の私がこれを読んでいるなら、遺書はもう不要だから、ビリビリに破っちゃってね!
 もし親族だったら、遺体と一緒にこの手紙を入れるか、間に合わなかったら手紙を捨てて下さい。あっても成仏できないから。




ーーそこまで読んで、俺は手紙を家に持ち帰った。

 この手紙を読んでいるのは、一年後のお前でも、お前の親族でもない。
 この手紙を書いた後に知り合って付きあった、俺なのだから、燃やす理由も捨てる理由もない。
 結婚目前で先立たれてしまったので、親族ではないが、俺は手紙をお前の写真の隣にそえてやって笑って見せる。

「お前が最期に言ってた手紙、見つけちゃったぞ~?」

 写真のお前が照れ臭そうに笑って見えた。
 一年後、俺もこの世にいるかもわからないくらい死を身近に感じた。

「俺も一年後の俺に手紙書こうかな……」


@ma_su0v0
【1年後】

6/24/2024, 11:17:08 AM