佐藤翼

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君は高く飛び上がる。ダンクシュート。歓声の圧が体の芯を揺らす。
君は翻る。相手選手はドリブルとともに走り去る。
君はもう追いついて、軽いステップでボールを奪い去っていく。
君は舞う。川の水が流れるようによどみが無い。
僕は客席にいた。頭の中でコートから自分を見た。
客席で、君と同じユニフォームを着て、派手なスティックバルーンを持っている。
座ったまま空笑いで声を出している。
コートにいる自分を想像することはできなかった。
君は最後に跳ね上がる。歓声の圧。
周りに合わせて立ち上がった僕は、力なくバルーンを叩いた。
コートで君とハイタッチする僕の姿は想像できなかった。
あの日までしていたことが想像できなかった。

題:踊るように

9/7/2024, 1:37:24 PM