箱庭メリィ

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「ねぇ、月がキレイだよ。見える?」

会話が途切れたと思った恋人から、ぽつりとそんな言葉が聞こえた。
スマホ越しに聞こえる声は、どこかうっとりとしている。

恋人の言葉に空を見上げると、確かに感嘆が漏れそうな綺麗な満月が浮かんでいた。

「ほんとだ。綺麗だね」
「見えた?凄いよね。まんまる」

たった2週間の出張。だけど恋人の声にもうホームシックになってしまった。
遠距離でも、こうして近くに存在を感じさせることが余計にそうさせるのか、ぽつりと言葉が漏れてしまった。

「寂しいな」

言ってしまってから、しまったと思ったがもう遅い。

「何言ってるの。たった2週間でしょ。帰る日会えるじゃん」

恋人が笑うように叱咤する。
仕事をしていたら2週間などすぐに経ってしまい、1ヶ月会えないこともざらにあるのに、どうしてかこの2週間がとても多く感じてしまった。

「そうだけど……」
「遠い遠いって言ってるけど、県1個またいだだけでしょ。同じお月様だって見えてる。近いよ」

恋人は慰めるように言ってくれた。
そうだ。同じ月を見られている間は、そう遠くない距離にいるのだった。かぐや姫のように月と地球くらい離れているわけではない。

「うん、ありがとうね」
「会えるの楽しみにしてる。お仕事頑張って」

慰められて少し元気が回復したのを悟られたのか、電話口でふふと笑われた。


/9/15『君と見上げる月…🌙』

9/15/2025, 9:31:51 AM