たやは

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眠れないほど

ある商品の開発のために何ヶ月も前から会議を重ね、やっとプレゼンができるまでに仕上がった。明日は社長や取締役などの上司の前で本番のプレゼンをやることになっている。

「私がプレゼンをしていいんですか?チカ先輩の方が分かりやすいと思います」

「何を言ってるのよ。分かりやすいって、同じ文章を読むから変わらないでしょ。」

「でも、でも、どうしょう。緊張してきました。」

明日が本番だと思うと足が震えてくるし、お腹が痛くなりそうだ。本番に弱い私。
これじゃあ、今日は眠れそうにない。
本番前はしっかり休んだほうがいいとチカ先輩が言っていたが、無理だ。緊張する。

本番当日。やっぱり朝まで眠れなかった。目の下の隈がひどいし、顔色も悪いためいつもより念入りにに化粧をしておく。

会議室に入りプレゼンの準備を始めるか、緊張がピークとなりトイレに駆け込む。
トイレから戻ってくるとチカ先輩に呼び止められた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。そうだ、チームみんなで円陣を組もう。主任〜。円陣組みますよ〜。」

先輩の掛け声に合わせてチームのみんなが集まり、円陣を組んでいく。円陣の掛け声は主任がやってくれるそうだ。

「よっしゃあ〜。いくぞ〜。」
「「「オーーー。」」」

なんか軽い掛け声であったが、気が抜けたら体に入っていた変な力も抜けた。さあ、プレゼンを始めよう。
プレゼンは思いのほか順調に進んでいた。壇上から上司たちの反応をみると割といいように思える。あと少し。

ゴロゴロ!

外は雨だったようで雷の閃光が見え、一瞬だけ停電となった。

「ちょっと停電したみたいだけれど大丈夫そうですね。プレゼンを続けましよう?とうしましたか。」

進行役の部長に促されたが、私はすでにパニック状態だった。どうしょう。どこまで読んだ。どうしょう。どうしょう…。もういっそ夢だったら良かったのに現実はそう甘くない。泣きだしてしまいそうになった時、チカ先輩の声が聞こえた

「太陽光による…」

ぱっと顔を上げるとチカ先輩と目が合い、慌てて原稿にを見る。太陽光…、どこ、どこよ。あった!
チカ先輩が読み上げてくれた場所からプレゼンを再開することができた。

「お疲れさま。プレゼン良かったよ〜」

「先輩、ありがとうございます。チカ先輩のおかげで失敗せずに終わることができました。」

プレゼンが終わった安堵感もあり、チカ先輩に抱きつくと涙が溢れ出てきた。

「何事も経験だからね。」

主任のお言葉で我に帰り、チカ先輩から離れた。チカ先輩はニコニコして私の頭をなでてくれた。

プレゼンはいろいろご指摘をいただき、もう一度検討することになった。この次も私がプレゼンをすることになっている。
この次は先輩の手を借りずにやることが目標だ。

12/5/2024, 10:14:16 PM