『隣に』
今日も私は、写真を撮ります。別に写真撮影という行為に使命を感じているわけではない。しかし、私は、今日も写真を撮ります。青い海、青い空、赤いポスト、緑の森、田んぼ、学校など様々な建物・風景をカメラに映します。
実は、私は、あまり、写真を撮ることが好きではない。理由は、私は、過去など意味がないと思っているからだ。そんな時にあの人は、教えてくれた。「思い出を形にすることは、素晴らしいことなんだよ」と。当時の私は、心の中で拍手できるほど、尊重できない発言だと感じていた。
半年前にあの人の訃報を聞いた....
それから、あの人の部屋に入った。すると机の上に私宛の手紙とカメラが置いてあったのだ。手紙には、「このカメラにもっといろんな景色を見せたいと思っている。〇〇さん(私の名前)、このカメラに多くの景色を見せてやってほしい」と書いてあった。私は、少し悩んだが、カメラを持ち、あの人のお気に入りの海に向かった。海にカメラを向け、写真を撮った。すると、「ふふふ」とどこか聞き覚えのある声がした。隣を見ると、あの人が笑っていたのだ。しかし、次の瞬間、消えてしまった。
その時に私は、なぜ、あの人がカメラを私に託したのか、その真意に気づいた。私は、昔から、この街とは、違う景色に憧れていたのだ。両親も友達も私の憧れに気づいてくれなかった。しかし、あの人だけは、私の密かな願いに気づいていたのだ。
今なら、あの人に「ありがとう」と言えるのに....。
ずっと隣にいて欲しかったと強く願っている。最高の景色を写した時に隣で笑うあなたをもう一度、見たいと思います。
3/13/2024, 3:59:21 PM