秋埜

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 雨は四十日四十夜降り続いた。
 珍しいことではない。今は薄くなった雲の向こうに日差しが滲んで見えるけれど、雲はまたすぐに黒く、厚みを増して、雷鳴を轟かせるだろう。やがて大粒の雨が世界に叩きつけられる。
 僕は君に会いに行く。
 硝子壁の通路の向こうの森は半ば水に沈んで、一メートルはあろうかという魚が樹々の間を悠々と泳いでいる。鈍い金色の鱗が不意にきらりと光った。雲の隙間から日が差している。
 雲が切れて空が晴れ渡る時、世界は終わると君は笑った。ねえ、世界の終りをみたいと思う?別に、と僕は答えた。世界なんて終わろうと始まろうと。
 僕は君に会いに行く。
 古いアパートの錆びた階段を上る。滴った汗が首筋を伝う。いつもより気温が高い。古ぼけたドアをノックして返事を待つ。鍵がかかっていないことは知ってる。やがて僕は軋むドアノブを回し、室内に足を踏み入れる。振り向いた君の笑顔を、窓から刺した光が暗く覆った。

 世界なんて終わろうと始まろうと。何度でも、僕は君に会いに行く。
 君に、会いに

4/13/2023, 1:26:08 PM