恋をすると世界が色づく、カラフルに見えるというがそれは本当なのか?
いつも疑問に思っていた。
だけれども、それをひどく納得した日があった。
それはピアノのコンサートに行った日だった。
プログラムを見ながら少し眠たくなっていた頃だった。
それは突然私の耳を通り脳を貫いた。突然私の世界が色づいた。
さきほどまでモノクロだった世界がその瞬間どうだろうか、パッと鮮やかになってしまった。その人のピアノは感情が乗せられてそれでも軽やかでその人の世界に浸ってしまうほどだった。
拍手の音が聞こえて急に引き戻された。
だがその拍手もまた、素晴らしいと鳴っていた。
まだ聞きたい、まだ聴いていたい、終わってほしくない。そう思うと同時に私はあの人が立っている場所に立ってみたいと思った。
私が心を奪われたように、誰かの心を奪いたい。
きっと私がこの人を忘れないように、誰かの心に残りたい、とそう思った。
その日私はピアノ、ピアノが奏でる音色、演奏者が奏でる思いに恋をした。
ああこれが世間様が言っているカラフルか、と。そう思った
これは私が15歳の夏。
25歳になった私はその恋した場所に立っていた。
私が恋したあの場所に。
血を吐くほどの練習はどうしても辛かった。
それでも、あの観客の感情を乗せた拍手、観客の心に残った、私の感情を乗せた音色が観客の心に刻まれた。という感覚を忘れられるわけがなかった。
どうしようもないくらいにその場所に恋をしていた。
私はこの先もずっとピアニストを続けるのだろう。そしてこの場所に恋し、感情の表現をやめないだろう。
恋というのはある種呪いなのかもしれない。
だけどその呪いさえも私の一部として愛そう。
そう思えるくらいにはここが心地よかった。
私の世界はあの日からずっと色づいてカラフルだ。
5/1/2026, 1:25:09 PM