時間よとまれ、お前達は確かに美しい。
カコ、キョウコ、ミライは同じ中学の仲の良い三人組だった。
カコは長い三つ編みが自慢の大人しい頭の良い子、キョウコはふわっとした明るいセミロングの誰にでも優しい八方美人、ミライは黒髪ショートボブの気の強い女の子。
三人は美術部で出会って意気投合した。好きな漫画のキャラクターに似せた絵でポスターを描いて美術部の教師に一緒に怒られた。絵が好きというより、文化系で気の合う仲間と遊んでいられればそれで良かった。
春には歓迎会で意気投合し、夏は部の課題をこなす為に少し冷えたコンクリの校舎で課題をする振りをして机の上で昼寝した。二度目の夏にカコが水難事故で行方不明になった。秋にキョウコとミライはどちらが悪いかと口論して、冬にキョウコは東京に転校した。
三度目の春、ミライは学校に行くのをやめ、部屋に閉じこもった。
そしてその夏、またお盆がやってくる。
キョウコは東京からミライに一通の手紙を書いた。
白い手紙には丸まっちい字で簡単な言葉が書いてあった。
"時間よとまれ、あの時私達は確かに美しかった。来週は三回忌です、カコは本当に天国に行きます。
私達も、動き出してみませんか?”
"生きて、間違おうよ" と。
時間は、いつから止まっていたのだろうか。ミライの髪は肩より長くなった。
「あんまり長くなるとカコを追い抜いちやうな…」
ミライは文具ハサミを取り出して鏡に向かった。
鏡の中のカコ現在ミライ誰でもない女の子が微妙な顔をして泣き笑いしている。
時間よ止まれ、お前達は確かに美しい。
そして砕け散って、
新しい時を作れ。
ハサミが静かに黒髪を落とす時。
9/19/2023, 12:26:29 PM