荒木 雲水

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 家族を連れて海で遊ぶ親子
 若い身体の透き通った柔肌と艷やかな黒髪 
 友人たちとくだらない話をながら飲み明かす夜 
 好きなことに熱中して、ただ楽しいと思う時間 
 
 いつの間にかそういった世間一般に幸福と呼ばれるような瞬間が目に入らなくなっていた。  

 そのうらにいつも自意識の穢い影を伏し目がちに探している自分がいることに気づいた。それを抜け目なくどんな些細なことでも見逃せないこと、それを賢さだと勘違いしていた。幸福を維持することよりも生活の心配に追われた何もない不幸に身を窶す方が遥かに楽で不安がないことは確かだ。人は幸福の為に生きているのではなく、ただ生きるが故に生きていく。 
  
 だけど、私は、私が見たかったセカイってそんなつまらない地獄だったかなって。そんな時にちょうど君が突然扉を開けて私を引っ張り出してくれる――なんてことは勿論ないと分かっていて、私が鍵を開けて扉を開いてすぐそこで座り込んで待っている君に逢いに行かなければならないんだね。
   
                 扉越しの対話

8/29/2023, 12:46:44 AM