アクリル

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キャンドル


見栄と過去を殺して残った臆病な本質が
抜け出せない闇の中で、確かに生きていた

手には小さな灯りがひとつ。
ここを通らなければならない、と悟った。

照らしたところで醜い影が揺れるだけ
消したらきっと怯えて、そこから一歩も動けない

アナウンスのような何かが要求をぶつける。

「自己紹介をしてください」

自己とはなんだっただろうか
名前と、それから、好きなあれこれ

抜け殻の情報を欲しがるのは何故?

物心ついた時から欠けている
人間味と呼ばれるらしい形無き何か
通常備えられているであろうはずの
重大な温度が見つからない。

客観視など不可能だから、私は呟く。

「できません」

指先よりも小さな灯りに照らされた
私に似た影が口を開く。

「嘘つき」
「こんなにどうしようもない場所へ迷い込むほど」
「生きることに」
「執着してきたくせに」

私とはなんだろうか
私の命はどこにあるのか
どうして体があるのか。

ただ動けるようになった内臓入れ、命ケース、脳を収納するポーチ、器用な2本のアームがついた生物...

蹲った影が言った

「いつまでも心身を嘲笑してないで」
「気づいてね」
「誰もジャッジしないから」

空虚に慣れた脳は安心した

私とは私の本心だ。
レッテルと他人の願望で作られた人形ではない。

「ごめんね」

「いいよ、じゃあね」

疎かにしてきた陰は消えていった。
私は、とうの昔から私であったことを思い出した。


目が覚めた。
明るい部屋の中で私は
影が内包されたことを受け入れた。

内側で影が言う

「心を吹けば消えるようなものだと思わないでね」

11/20/2024, 7:45:58 AM