テーマ『好きだよ』
ガラガラ、と部室のドアを引いて先輩と私は取材から戻ってきた。西日が眩しい。
「いいネタになったな」
先輩は満足そうにメモをめくる。
新聞部の部長。校内だけに留まらず、外でも色々と首を突っ込んでは記事にしている。私もその一員ではあるが。
「これ、一歩間違ったら脅迫だって言われませんかね……」
「ははは、そのときはそのときだ。口で俺に勝てる奴なんてそうそういないぜ?」
ブラインドを下ろしながら不安を漏らせば、先輩はなぜか得意げに笑う。能天気なんだか面白がっているのか分からない態度に軽くため息をついて、自席に座る。
「まあ、ここまで来たら記事にはしますよ。メモください。先輩は山ほど撮った写真の整理をお願いします」
パソコンを立ち上げてから、「部長」と書かれた紙の置いてある席に目線を向ける。そこに座った先輩はニコニコとしながらメモを渡してきた。
「君のそういうところ、俺は好きだよ」
「はい?」
唐突に変なことを言われたので、ジト目になる。間違っても愛の告白だなんて思っていない。クラスメイトには「よく一緒にいるけど彼氏なのか」と言われるが、ただの部活の先輩と後輩である。
「なんだかんだ言いつつ、俺に付き合ってくれるところが、ね」
「……中途半端になるのが嫌なだけですよ。無駄口叩いてないで手を動かしてください。最終下校時刻までそんなに時間がないんですから」
「ハイハイ」
適当な返事を聞き流して、私はパソコンの画面に集中し始める。先輩が何かつぶやいた気がしたが、それはすでに意識の外にあった。
「……好きなんだけどなぁ」
4/6/2025, 2:57:54 AM