明鏡止水の一日一題

Open App



3年前、彼氏からもらった、チャチな可愛らしい指輪がお気に入りだった。

ある日、それを失くしてしまったことを彼氏に報告すると、「また、新しいのを買ってあげるよ」と言われた。

分かってない。
私がほしい指輪は、あの指輪だけなのに。

彼氏に言うと、素直に謝って、探すのを手伝ってくれた。

結局、先日彼氏の家に寄ったときに失くしてしまったらしく、彼の部屋に落ちていた。

私に返す時、微笑んで左手の薬指につけてくれた。

「こんなものでも、君の“大切なもの”にしてくれてありがとう。こんなのでごめんね」

私の大切なものは、さらに特別なものへとなった。


“大切”は金としての価値のみではない。
“大切なもの”とは、美しく特別な思い出だ。




ピー、と響く電子音。
ものすごい喪失感に襲われる。

「ねぇ、目覚ましてよ。……ねぇ、ねぇ!!」

言い合いばっかりだったけど、本当は大好きだった私の兄さん。


それは、失ってから気付くもの。


【大切なもの】

4/2/2024, 3:08:23 PM