▶66.「冬晴れ」
65.「幸せとは」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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人形とナナホシは、あれからも何度か似たような問答を、
思考学習のようなものを繰り返しながら南へ、南へと向かっていた。
人と会うことを目的にしなければ、
疲れることを知らない人形たちの移動速度はぐんと上がる。
何日か経った冬晴れの朝。
人形が日光浴をしていると、大きな鳥が飛んで行くのが見えた。
人間たちは、鳥が空を自由に飛んでいると考えたり、
自由の象徴のように扱ったりしている。
風に乗っているのだろう、
山をも超えるような高さで翼を広げたまま進んでいく。
実際は、数々の制限を乗り越えて飛行を実現している。
骨を変え消化機能すら落として身体を軽くし、
羽ばたきに必要な筋肉を付け、
その矛盾を解消するために高いエネルギーを欲する。
かつて人形は、自分と鳥が似ていると思ったことがある。
だが今は、小さくなっていく鳥の姿を見ながら、
花街の子猫を思い出していた。
自由に希望を持つ人間。
「あれは、春を待っているだろうな」
「ドウシタノ?」
「いや、何でもない。待たせたな、出発しよう」
1/6/2025, 7:51:20 AM