あかるあかり

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『どこ?』

 真白の翼をひろげて、飛びたつのなら。
 何処へ行こうか。
 もしもこの背に翼があれば。

 翼さえあれば何処かへ行けるのに。
 何処かへ、そして何処であれ。

 紙の上。転がっていたペンを手にとる。
 ペン先を垂直に紙に当てて立てて、そのまま指を離す。ペンは乾いた音をあげて倒れた。ペン先は二時の方向を指していた。

 翼があれば、いいのに。
 こんな将来役にも立たない課題に足を引っ張られる必要もない。こんな、受験には必要で、なのに受験以外では意味もない知識もスキルも、放り投げられるのに。

 翼が欲しい。

 そんな夢想。
 空想の翼はどこへでも連れていってくれるだろう。
 それはでも、夢想空想でしかない。

 何処かへ行きたいなら、自分の脚で行くしかないのだと、まだ知らなかった。いや、知っていたけれど向きあえなかった。
 自分のこの身こそ翼でも行けない場所まで往くすべなのだと。
 まだ。

3/19/2025, 10:51:36 AM