時計の針
小さい頃、コツ…コツ…と鳴る針の音に耳を傾けながら眠っていた。
大人になって、久し振りにその時計を見た。少しガラスがひび割れていて、針も動いていない。
僕が眠るまで、見守っていてくれたあの時計は、時を刻むのをやめてしまった。少し寂しい気持ちになった。
デジタル時計は味気ない。
まいにち、時間を見るたびに「もうこんな時間か…」と溜め息をつく。大人になると時が過ぎるのがこんなにも早く感じる。真新しい発見がなくなるから、だそうだ。
でも、それでいい。
もう、何も見たくない、感じたくないと想うような発見と出会うくらいなら、このまま目を閉じていたい。ただ時が過ぎていったほうがいい。
でも、どうしてだろう。
僕の中の何かがそうさせてはくれない。
コツ…コツ…コツ…。
時を刻み続ける音が、まだ、どこからか聴こえている。
2/7/2023, 6:24:26 AM