「紅の記憶」
血飛沫がパッと飛び散って、私を庇うように前に立っていた人が倒れていく。傷口から流れ出ていく鮮やかな赤が、彼女の命の終わりを示すように床を染めていく。
呆然としながら顔を上げると、この惨状を生み出した人物が次の狙いを私に定めてゆっくりと歩いてくる。
怖い。嫌だ。そんな感情よりも、大切な人を傷つけられたことへの怒りが湧き上がり、炎のように燃えていた。
その記憶だけが私の頭に強く刻みつけられ、その後のことはよく覚えていない。
血の赤と、怒りの赤。残酷なまでに鮮やかな2つの紅に染められた記憶は、今も私の心に巣食い、縛り続けている。
11/22/2025, 3:09:27 PM