ある日、お母さんがいなくなっちゃった。
前から帰ってこないことは多かったけれど、その日は朝になってもお母さんは帰ってこなくて、次の日も、その次の日も帰ってこなかった。
「おかあさん、ぼくのこと捨てちゃったの……?」
お父さんはお母さんよりもずっと前に出て行っちゃったから、ぼくは今家にひとりぼっち。
お母さんがいなくなった日、いつもよりも多く渡されたごはんのお金を使って、コンビニにお菓子を買いに行く。
ポテトとか唐揚げも美味しそうだったけど、お菓子の方が安いから、いっぱい食べれるんだ。
「ぼく、今日も1人?服もずっと同じだし、何かあったの?」
コンビニのお姉さんがぼくに聞いてきたけど、ぼくは恥ずかしくて怖くて逃げちゃった。
「ちょっと……!」
お姉さんがぼくを呼んでいたけど、気にせずに帰った。
たくさん買ったお菓子があるから、しばらくコンビニには行かなくてもいいだろう。
今日もお母さんは帰ってこなかったけれど、明日は帰ってくるかもしれない。
晴れの日も雨の日も、嵐が来ようとも毎日お母さんを待っていた。
お菓子も無くなって、お風呂のお水も出なくなった頃に、家のドアをノックする音がした。
「お母さんだ……!」
やっとお母さんが帰ってきたんだ。そう思って、急いで玄関まで走る。
ガチャリ
ドアを開けると、警察のお兄さんと、いつかのコンビニのお姉さん。
「この子です!」とお姉さんが言うと、警察の人がしゃがんで、ぼくの目を見る。
「ぼく、お家の人はいるかな?」
「お母さんがいるよ……」
「でも、今お家には君しかいないよね。お母さんはいつからいないの」
「お母さんは帰ってくるもん!」
ポロポロと涙が流れる。警察の人は悲しそうな顔をして、ぼくに一緒においでと言った。
そこからのことはよく覚えていなくて、気づいたら知らない大きなお家にいた。
たくさんの同い年くらいの子どもたちと、たくさんのお母さん。
ぼくのお母さんは結局戻ってこなかったけれど、ここの家族は嵐が来ても一緒にいてくれる。
今度はずっと一緒にいられたらいいな。
お題『嵐が来ようとも』
7/30/2024, 9:45:16 AM