【タイムマシーン】※超長文注意
「タイムマシーン、乗ってみたくない?」
そうやって、友人が変なことを言うのはいつものこと。俺は毎回聞こえないふりをする。
「え?聞こえてる?おーい」
「聞こえてないふりしてるんですよ。」
「じゃいいや。続けんね〜」
「おい、」
訳が分からん。どうして続けようと思うのか。そもそも、タイムマシーンなんてもの、この世には存在しないのに。
「タイムマシーンがさ、僕ん家になるんだよね〜」
「意味が分からない」
「言葉の通りだよ。でさ、タイムマシーン、2人乗りなんだよね。誰乗せようか考えてるんだけどさ、僕ん家の犬のペロか、君か、迷ってるんだよね〜でも、犬の方が強いし〜」
「おい、犬に負けたのか、俺は。」
「でも、よく考えたら、犬って喋れないじゃん?だから、君にしようかな、って。」
「……いい。行かない。」
「…じゃあさ、質問変えるね。タイムマシーンに乗って、時空を越えたら、どこに行きたい?」
「……過去。」
「ふうん。僕は未来かな。正反対だね!僕達。」
「でも、そもそも、タイムマシーンになんか乗りたくない!今を楽しみたい」
「僕は、楽しいことを先にしたい。」
「……一人で行けば。」
「なんで?」
「お前は俺とは違うから、」
「でも、僕にないものをもってる。」
「お世辞はいいよ……」
「…そっか。」
逝ってしまった瞬間、後悔した。友人は思いっきり笑顔になっていた。これは、無理してる顔だ。無理して、怒りを鎮めてる顔。でも、今回は反論せず、ただただ、哀しそうに、笑っていた。
「ばいばーい。未来でね」
ただの、戯言だと思った。遊びだと思った。俺は、アイツを信用したこと、あったか?いや、なかった。
間違えたのか?選択を。もっと、アイツを信用すれば…
「まって!」
気付いた時には、もう、いなかった。
あれから、二十年経った。
あの日の次の日、皆は、アイツのこと、忘れていた。そんな奴、知らない、分かんない、存在しないよ、って。最後があんな会話って……終わってんな。
今はもう三十路だ。世界も大きく変わり、タイムマシーンが作られたのは勿論、空飛ぶ車も作られた。
でも、アイツがいない。
くだらない会話がほしい。
「あー、ほんと、あの時からどうかしてんな」
「タイムマシーンに乗ってみたくない?」
後ろから、懐かしい声が聞こえた。二十年経ったはずなのに、あの声は鮮明に憶えてる。
後ろを振り向くと、アイツと、アイツの犬のペロが、あの日の変わらないまま、そこにいた。
「やほー!老けたねー!」
「お前はそのまま過ぎだろ…」
「タイムマシーンに乗ったからね。肉体はそのままだよ」
溢れてくる涙を拭わずに、
「おっかえり!」
「っ…ただいま」
1/22/2026, 10:32:49 PM