浜辺 渚

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「腹を割って話そうぜ。もう、ここまで来ちまったんだ。今さら気にすることなんて、俺らがあとどのぐらい運命に縋りつけるかって点だけだ」
「確かにそうかもしれない。こんな状況だ。もう何を取り繕ったって、何も残らない。でも、何処か俺の心の奥底で、完全にさらけ出せない部分があるんだ。それを見せてしまうと、君を幻滅させるかもしれない。あるいは、その自覚は僕にとって危険な類いのものかもしれない」
「たとえお前が何を出したって幻滅なんかしないぜ?蛇の肝でも、カバの糞でも、なんだって出せやいいさ。確かに、そういうものに向き合うのは多少の傷は受けるかもしれない。でも、そのまんまにしたって、それはそれで危ないものに変わりない。むしろ、それは暗闇の中でより手をつけられないものへと大きくなっていくものだ。ちょうどいい機会なんだ。こんな状況滅多にないぜ。いいから、さらけ出しちまえ」
「そうか、これは僕の中で大きくなっているのか。そうかもしれないな。分かったよ。腹を割って話そう」
「そうこなくっちゃな。それで、お前の中にあるものはなんなんだ?」
「実は……なんだ」
「これは、想像以上のものだぜ。でも、これでお前はそれを吐き出せた。これ以上、そいつが悪さをすることは無いさ。しかし、扱っているものが少々微妙だな。それが力を蓄えないとしても、これで綺麗さっぱり無くなりはしないだろう。これは難しい問題だ」
「そうだろ?確かに吐き出してスッキリはしたさ。しかし、それだけだ。事態は何も変わっていない。入れ歯の虫歯が治ったようなものだ。依然、僕自身が求めている実感は手の届かないところにある」
「事態は変わってないかもしれないが、俺らの今立たされている状況から見れば、俺ら個人の枝葉末節の問題なんて気にする必要はないさ。まあ、聞いておいてなんだがな。気楽に行こうぜ」
「いつもこうだ。僕の開示にはなんの意味があったのか、教えてくれよ」
「スッキリしただろ?男ってのはスッキリしないと生きていけない生き物なんだぜ」
「やれやれ」

2/5/2025, 3:42:14 PM