足音
最終下校時刻を知らせるチャイムの音がする。探し物をしていた僕は、ようやくその探し物が見つかった時のことだった。
「もうこんな時間!? 早く帰らないと……」
窓から外を見れば、夕日で赤く染まっていて、教室を赤く照らしていた。教室から廊下を覗くと、廊下の電気はついておらず、少し薄暗い。七不思議の人体模型でも動き出しそうな雰囲気に、恐怖心が芽生える。
早く家に帰ろう。そう思い、廊下に出て正門へと歩き出す。すると、後ろからひた……ひた……という裸足で廊下を歩いているような足音が聞こえる。
誰かが後ろを歩いているのだろうか、と思った僕は後ろを振り返ろうとした。しかし、それは叶わなかった。背後から感じる禍々しい空気に体が思わず固まった。振り向いてはいけない。本能的にそう思った。
(逃げないと……! )
僕は後ろにいる相手に気付いていないふりをして、前を向いてやつから逃げるように歩き出した。
僕の心の中には恐怖心で埋め尽くされていた。
歩いた。正門の前まで歩いてきた。気付いたら後ろからの足音は聞こえなくなっていた。バクバクと心音でいっぱいいっぱいになる。
荒くなっていた呼吸を深呼吸して落ち着かせる。
さっきまで後ろにいたのはいったい誰だったのだろうか。もしかしたら他にいた学校の生徒の足音だったのかもしれない。今になってそう思った僕は、つい後ろを振り返ってみてしまう。
しかし、後ろを振り返っても誰もいなかった。暗くなった夜を見上げ、早く帰らないと、と正面を向いた。
「つかまえた」
8/19/2025, 8:44:54 AM