「好奇心そのものなんだ」
その呟きは私の耳にはっきりと届いた。
何度目かの休憩に入ったおじいちゃんは、背中につけた機械から酸素を送り込まなければ、死んでしまう。それでも元気に生活し、ときには外に出ることもある。私はその後をついて行き、不測の事態に備えなければならない。
誰もおじいちゃんを止めることはない。なので、私もそれについていくしかない。
最初はおじいちゃんに付き合わされて、私は何をやっているんだろうと思っていた。でも、だんだんおじいちゃんは何をやっているんだろうという疑問へと変わっていった。
公園に行く理由はなんとなくわかる。散歩のためだし、植物を見てるから。街に繰り出して、服を見たり、道の真ん中で立ち尽くしてみたりするのはわからない。
もう行くよ、と声をかけると、はっとして向き直る。
「おじいちゃん、道の真ん中で何してるの?」
「今の若い人って、どんな感じかなと思って……」
私は驚いて聞き返した。
「服装とか見てるってこと?」
いやいや、とおじいちゃんは頭をかく。
「服はやっぱりわからん。でも話してることは、面白いなと思って聞いてるよ」
「あきれた」
私は首を振ったが、カフェとか電車内で人の話を聞きたがる癖はおじいちゃん譲りなのだと、内心理解してしまった。
「じゃあ、帰ろうか」
「うん、ありがとう」
おじいちゃんはふるふるとした背中を見せた。
「でも、ほんとうは、みきちゃんと過ごす時間が楽しくて」
3/13/2024, 1:11:54 AM