紅華

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小さい駅前の小さい個人商店には、猫がいる。
商店の飼い猫で、時々店の外に出てくる時がある。
逃げないように首輪と紐で繋がれている。
その猫の名前は知らない。

普通電車しか停まらない小さい駅から人がたくさん降りて来た。
この近隣は開発が進み、住宅街が広がっていた。小さい駅前から徒歩6分のところには、スーパーもあり、家族連れにとっては最適な移住区域であった。

帰宅ラッシュの電車から降りて、駅から出る。
商店の前を通ると、珍しく猫が車のいない駐車場で寝転んでいた。春のほどよい気温で、ゴロゴロとしている。
「にゃー」
猫が一声上げた。よく見ると子猫のようだ。いや、子猫と成猫の間のように見える。
人懐こいのか、商店の前の道を通る人の姿を目で追ったり近寄ったりしていた。
だけど、誰一人。子猫に興味を示していなかった。
「にゃー」
切ない鳴き声に自分は、子猫の前へ行く。子猫はすぐに自分の足元をうろつき始めた。クンクンと足の匂いも嗅いでいる。
「にゃー」
子猫は顔を上げて鳴いた。自分は子猫の頭を優しく撫でた。
気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らす。

その日から自分は、子猫がいる日は必ず会いに行くようになっていた。
次第に商店を経営しているばあちゃんとも仲良くなり、今では子猫と商店で買い物をするのが、日課になりつつある。

11/15/2023, 2:17:30 PM