田中ボルケーノ

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出会いとは摩訶不思議なもので

なんの脈絡もなく突然現れ

かと、思えば

いつの間にか音も立てず去っていく


例えば

偶々聴いていたラジオで

偶々気になっていた本の紹介がきっかけだったりして


見知らぬ街で

思い出してなんとなく本屋に立ち寄って

探していた本を見つけ手を伸ばすと

同時に隣からも同じ本に手が伸びて

それが最後の一冊で

あ、どうぞ

いや、そちらがどうぞ

と、譲りあったりして

そうこうしてる内にその女性は

昔どこかで会ったことがある様な気がして

あちらも僕に気づいて

あれ?えー、久しぶり

なんてことになったりして

お茶をしようということになり

会話の中で偶々聴いていたラジオを彼女も聴いていたりなんかして

昔から知っていたのに

こんなに気が合うなんて思いもしなかったりして

会話は弾み

夜は更けて

帰る時間になったりして

駅のホームでお互いが逆方向の電車を待つ間

なぜかわからないけど

もう会えない様な気がして

踏切が鳴り彼女の電車が先に迎えにきたりして

客のまばらなドアが開いて

彼女は電車に乗るとこちらを向いて

格好つけるつもりはないけど

また巡り会えたら

と、声をかけたりして

ホームに発車のベルが鳴り響いて

小さい声で彼女が

もう会えないかもしれないよ

と呟いて

気づいたら

腕を伸ばして閉まる扉をこじ開けて

電車に乗り込んでたりして


駆け込み乗車はご遠慮下さい


それが二人の始まりだったりして


           『巡り会えたら』




10/3/2024, 3:15:19 PM