『星座』
空を廻る星々を読み、星の囁く未来を解き、それを王への助言とするひとが私の祖母だった。星読みにかけては右に出るものがいないと称えられて重用されていたのだが、それを妬んだ者がある日、祖母に毒を盛った。祖母の命は助かりはしたものの目は塞がり声は失われて星読みとしての責を果たせなくなってしまった。後釜についた新たな星読みが毒を盛った首謀者とも噂されたが本当のことはわからない。
目が塞がり声を失っても祖母には星の動きが解っているようだった。どうして城に戻らないのかと星空の下で問うたことがある。祖母は私の手をとり指で文字を書き、おかげで隠居の身になれたと笑ってみせた。もしかすると祖母は毒を盛らせたのではないかと疑いを持ったりしたが、それを問う機会は失われてしまったので今となっては誰にもわからない。
祖母が手のひらに記したいくつもの言葉はやがて教えとなり、導きとなった。稀代の星読みの弟子は城の一角で今宵も星座を見上げ、星が淡々と囁く未来のことを読み解いている。
10/6/2024, 2:52:04 AM