カーテン
貴方は当たり前のように貴方のまま生きている。
朝起きて、カーテンを開けて外を見る。そのくらい自然に。
貴方は幸でも不幸でもない。
お金持ちなわけでも、頭がいいわけでもない。
容姿も秀でているわけじゃないし運動もあまりできない。
だと言うのにその姿はやたらと晴れやかで。
幸への執着がないのかいかれているのか。
貴方は貴方の人生に満足している。
だからちっぽけな幸不幸に惑わされない。
重たいカーテンに風が吹いてもびくともしないように毅然としている。
吹く風吹く風は貴方を確かに押しのけようとしているのに。
威風堂々。だというのに嫌らしさがない。
尊大でありながら最も我々に近しい。
貴方の魅力に取り憑かれた。
貴方を開けて見たかった。
体を、頭を、心を。
知りたい。
貴方を知りたい。
もっと。
もっと。
その魅力の正体を。
カーテン1枚に遮られて浮かび上がる影。
美しい貴方がそこにいる。
重たいカーテンは風で揺れない。
貴方の姿を見ることはできない。
私は貴方にとって不特定多数の目の一員。
カーテンを開けたら外が見えるくらい当たり前にいるもの。
貴方のその目を奪いたい。
開けたカーテンの奥にたまたま鳥がいたように、
重たいカーテンがたまたま強い風で動くように、
貴方のたまにの非日常になりたい。
しかしカーテン越しの恋はとどめておこう。
私は貴方の外でいい。
貴方は貴方であるのが美しいのだから。
6/30/2025, 5:11:15 PM