蒼月 有紀

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香水

あの日、初めて香水を買いに行った。
あの子と一緒に。
そのお店は重ね付けでオリジナルの香りを作るというコンセプトだった。

ボディミストしか買ったことがなかったけれど、大学生になったし香水くらい買ってみようかってふたりで入った。

あの子は、友達の誕生日プレゼントに買うと言っていて、少し複雑な気持ちだった。
私といるのに、他の誰かのことなんか見ないで…。
なんて言ったら、友達なのに重い、かな。
他の誰かのこと考えて、誰かのために迷っている君を見ているのは案外苦しいんだよって。
気づいてくれればいいのになんて思ってしまった。
あの子は金木犀の香りを探して、香って、香りをまとっていた。

私はヴァニラとサボンの香りの物を探した。
サボンは爽やかで、なんだか夏みたいな香りがした。
ヴァニラは重くて優しくて、冬みたいだと思った。
2つを合わせたら、どんな香りになるのかなって興味を惹かれて選んだ。
合わせるとどこか爽やかで優しい香りになった。

なんだか楽しく思いながら、帰路についた。

帰り際。
「おまけです」ってもらった小さいボトルの香水と、選んだ香りのついたカードを交換した。
あの子が私の選んだ香りを纏うときがあるのかな、なんて嬉しく思いながら。

8/30/2024, 4:43:14 PM