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何もいらない
 
 私は4年前、親とはぐれて迷子になった。トボトボと道路を歩いていたら、彼が拾ってくれた。よわっている私にミルクや少し柔らかくしたご飯。彼といる毎日は温かくてふわふわとなるような気分にしてくれる。そんな存在だった。彼は仕事をしているので朝家を開けるとき、
「行ってくるなぁ〜。」と優しく私を撫でてから家を出る。その後は、家でゴロゴロしたりおもちゃで遊んだりする。彼が帰ってくる時間帯になれば私は、玄関にトコトコ走り座って待つ。"ガチャッ"その音が鳴れば私は尻尾を振って彼を迎える。"おかえり"その気持ちを込めて
「ワンッ!」と元気よく吠える。彼は
「ただいまぁ〜」と疲れた声で言い私を見ると
「かわいいなぁ〜。本当に。今日の疲れが吹っ飛ぶよ。」
そう言いながら優しく撫でてくれる。幸せな日々が毎日続く…そんなふうに思っていた。
…何週間か私は体がだるく起きられない日がか続いた。彼も、すごく心配していた。だから病院に行った。病院に行く前も着いても彼はソワソワしていた。でも、帰るときは行く前と違い顔が真っ青だった。車に乗って、彼に"大丈夫?"その気持ちを込めて
「クゥ〜ン」そう言うと彼は我にかえり、私の頭をワシャワシャ撫でながら
「大丈夫。大丈夫だよ。俺がなんとかするから。」と。
彼は、嘘が下手くそだ。涙が目を伝ってるよ。でも、彼は私を少しでも安心出来るように声をかけてくれたのだ。だから、私は少しでも元気に見えるように
「ワンッ」そう言った。
数日後、私は体調が悪化し彼が病院に連れて行った。彼は、ずっと撫でてくれる。安心して目を瞑りたくなる。でも、目を瞑ろうとするたび彼は
「ダメ。駄目だよ。まだ…まだ…。」と泣きじゃくりながら、言ってくる。その言葉で何度眠気を払っただろうか。私は、酸素マスクをしている…だから分かる。もう自分は…と。最後の最後まで彼は私と一緒に痛いと言ってくれている。だから、私は最後の元気を振り絞り
「ワンッ…!」と吠えた…
その後は、目を閉じた。
彼の泣きじゃくる音、声が聞こえ
「嫌だ!嫌だ!先生何とかしてください!先生!」と彼は声を上げていた。

…私は、あなたと一緒に入れてよかった。こんな私を拾ってくれて…愛してくれて。もし神様が居るのなら、彼には私が居なくても元気に笑顔に毎日を過ごせるようにしてください。それ以外何もいらない。だから願いを叶えてくれますか?

4/20/2024, 1:26:10 PM