コンクリートと踵の擦れる音がする。
喋り声がガヤガヤと聞き取れない。
いろんな匂いがする。
私はスクランブル交差点のど真ん中で立ち止まってみた。
人が行き交う中、私だけ。
映画の主人公になった気分だ。
世界が私中心に回っている。
行き交う人々が私を見ている。
そんな事だったら良かったな。
私はまた歩き始める。
何故なら、ここを行った先にさっきの感覚よりもいい事があるからだ。
「涼太!」
「お、来たか、結衣。おかえり。」
思いっきり彼の腕の中に飛び込む。
街の街灯が、
街を行き交う車のライトが、
街を練り歩く人々の声が、
私たちをスポットライトのように照らしている。
そんな世界が、一番いい。
寄り添える場所がある、この世界が。
お題:街 2023/06/11
6/11/2023, 1:55:03 PM