あの光景を今でも鮮明に覚えている。
そう言えば、少々語弊となるのだろうか?
バクバクと速まる鼓動、駆ける呼吸、緊張感。
忘れ去るには強烈すぎた実体験ほど、いつまでも己の思考が「それ」を手離そうとしない。
どれだけ仔細な部分こそあやふやになろうとも、結局のところ深みで存在し続ける。
大きな思い出の一つとして、最期を迎える瞬間まで脳裏に焼き付いているんだろうなと思わせてくるほどに。
けれど「人の記憶」とは、足りない前後が勝手に補完される代物だと聞く。
であれば、時を経て思い出せる“過去”とは、つまり。
……ああまったく、お前さんは随分調子の良い存在である。
【過ぎ去った日々】
3/9/2024, 11:39:17 AM