るに

Open App

ある日、
背の低い人がこの花屋にやってきて
カラフルな花を額縁に飾りたい、
選んで欲しいと言われたので
明るめな色合いの花を選んでいる時だった。
予言します。
最近テレビに出てる
薬物乱用ダメ絶対!の彼、明日逮捕されるよ。
薬物を取り締まる人だったんだけど、
3日間大麻をやってる人に捕まったことがあって
薬物漬けにされちゃったんだよね。
でも誰もケアしてくれなくて。
それで少し前から取り上げた薬物を
自分で使ってたんだ。
それが今日の夕方に後輩に密告される。
いきなりとんでもない話をし出すので
思わず手を止めて聞き入ってしまった。
少し背の低い人は続けて言った。
あ、もう1つ予言します。
君、2年後死ぬよ。
驚いたが、
別に死にたくないというわけでは無かったので
私は表情を崩さなかった。
その人は花を受け取ると
すぐに店を出てどこかへ行ってしまった。
花屋は18時にはもう閉店で
私は家に帰った。
部屋に入った途端
両目から涙が溢れ出して
口から死にたくないという言葉が出た。
意味がわからずにいた。
私は今までの人生で楽しいことも
苦しいことも無かったから。
生きてても死んでても同じなら
死んでいたいなと思っていたぐらいだ。
鈴をつけた黒猫は
私の涙をペロペロ舐める。
いつもは私と同じで
無表情で感情を表に出さず
気に入らないことがあると
爪で引っ掻くくせに。
やさしくしないでよ。
今日だけはやさしくして欲しくない。
あの背の低い人が言ってたことが本当なら
2年後に死ぬかもしれないってのに
生きたくなっちゃうから。
翌朝、
テレビに出ていたのは
薬物で捕まった彼だった。
昨日の人が言っていたことは本当だったのだ。
この調子なら私死ぬな。
そう思うと
花屋なんかでバイトしていたくないと
バイトを飛び
旅行に出かけた。
もちろん黒猫も一緒に。
行動が早すぎるし
準備もなにも出来てなかったけど、
野宿も視野に入れて
1日を満喫した。
"Good Midnight!"
久しぶりに見た空は
黒くて暗くて
星が沢山散りばめられていた。

2/3/2025, 4:25:16 PM