終点
片道約6時間半の路線バスがある。
高速道路を使わないものとして一番長い路線バスで、トイレ休憩が3回ある。
路線バスだから通勤、通学、通院、買い物に使っている方もいるし、お出かけとして乗っている方もいる。
先月までこのバスはわたしにとって通勤バスだった。
でも今日は終点への旅バスだ。
この路線バスに乗っていれば秘湯や観光地、神社仏閣を巡ることも可能だけれど、わたしの目的地はそのどれでもなく、終点ひとつ。
普段何気なく乗っていたこのバスがどこへ行くのか見たくなったのだ。
いつも乗るバス停から乗って、終点まで。
終点で降りたらまた乗って、いつも乗り降りしていたバス停を通り過ぎてもう一つの終点まで。
この道のりでドラマが始まると信じるには年を取りすぎたけれど、なにかの区切りをつけられる気がする。
それは仕事を終えた区切りなのか、あるいはもうこのバスに乗らない日々の始まりへの区切りなのか。また別の何かなのか。
何も見つからなくても良い。区切られなくても良い。
ただ終点を待つこの時間が不思議と心地良いから、今はそれだけでいい。
さあ行こう、次なる終点へ。
8/11/2024, 8:12:21 AM