赤茶けた土の上を、ちろちろと紅火が絶えず燃えている。
空は暑い。
赤い太陽が、ギラギラとひび割れた大地に照りつける。
血縁主義とは、無能の楽園だ。
有能なものは貴賎なく生まれた順によって、実力以上に蔑まれ、無能なために自身を万能だと思い込む傲慢なものは貴賎なく、そのただ一つの才能、自信過剰で、面の皮厚く血縁者と名乗り、利権を貪る。
つまり、今、私が住んでいるこの国は、無能の楽園なのだ。
いや、私のこんな思いも、一度口にすれば、負け犬の遠吠えと呼ばれるべき、情けない言葉なのかもしれない。
間違いなく私は、かつていたその楽園から、追放された身なのだから。
王族の遠縁の貴族の第一子として生まれた。
求められる素養のハードルは高かった。
必死に努力し、考え、教えを乞い、統治者として相応しい実力をつけるために、今まで生きてきた。
それが私の人生だった。
順調に行けば、私は、父の財産と血脈を継ぎ、政略的な血縁を受け継ぎ、広げながら庶民の娯楽として目に晒されながら、厳しく甘美な統治者としての生を全うするはずだった。
それなのに、私は今、庶民すら頼らない、赤茶けた裸の大地に踞り、獣のように飢えを凌いでいる。
謀反があったのだ。
牙も持たない、鋭い爪も、毛皮の鎧すら持たないはずのニンゲンは、ある日突然、大群で現れた。
父は無惨に首を盗まれ、母は鎖に繋がれ連れ去られた。
私は、大勢の庶民への見せしめだ、として、こうして裸の灼熱の土地へ放り出された。
窮屈で不満ばかりだったあの土地での暮らしも、手放してみると、途端に懐かしく、楽園のように感じるものだ。
私が無能だからその価値に気が付かなかっただけで。
しかし、その楽園もまた、私たちのような無能にとっての楽園にしか過ぎなかったのだろう。
今や、あの緑の豊かな地は、爪や牙などの自前の武器すら持たない、無能の生物たちの楽園となった。
そうして、私は獣のように土塊に塗れ、獣のように飢えを満たす。
それが楽園にどんな破滅をもたらすか、誰も知らぬ間に。
今日も私は、手の中から零れ落ち、ニンゲンの手に堕ちた楽園を呪いながら、飢えを凌ぐ。
かつて地獄に住むと教わった、悪魔のように。
妖怪のように。
化け物のように。
獣のように。
無能の楽園は、今も無能たちが、それとは知らずに栄え続ける。
いつかまた、楽園は別の無能の手へ渡るのだろう。
5/1/2026, 9:30:07 AM