「昨日みた夢ね、すっごく幸せだったの。
10年後の未来の夢。
お父さんがいて、お母さんがいて、お姉ちゃんがいて。
でもね、1つだけ足りなかったんだぁ」
「何が?」
「……キミだよ。キミだけ、いなかった」
ほんの少しだけ、声がふるえた。
おかしいな、もう未練なんてないはずなのに。
「そっか」
キミはなんてことないみたいに、遠くを見る。
星空の下に、ゆらゆらキラキラと光る海が見える。
「ねぇ、別れよ」
「……たかが夢でしょ?」
「そういうところだよ。
夢でキミがいない未来を見るほど、私のなかでのキミは、小さくなってしまったの」
「そう。きみの言うことはいつも、よくわからないや」
目の前の海が、ふたりで見る最後のけしき。
……本当はね、未来にキミもいたんだよ。
けれど、私が先に死ぬ未来を知ってしまったから。
私が死ねば、キミは悲しむでしょう。
4/4/2024, 8:24:53 AM