ここは薄汚れてて、何にもなくて、つまんない部屋。
だからぼくはここに「もの」をつくることにしたんだ。
たとえば、いつでも助けてくれるとても大きなカッコいいお魚さん。
いろんな質問に答えてくれる頭のいいフクロウのおじさん。
小さくて、たくさんいて、カラフルなうさぎさんたち。
たまにはこの部屋自体も変えてみたんだ。
広い駅のホーム。
キラキラ光る結晶のある洞窟の中。
海の底の王国。
どこまでも広がる草原。
みんなはどこに行ってもぼくのところに来てくれて、遊んでくれた。
そのうちに、知らない子が隅っこにいるのに気づいた。
まあるく縮こまって、俯いてる子。
でも、少しだけこっちを覗いてたり、音楽が流れてたらそれに合わせて少し体を揺すったり。
みんなと遊んでるうちでも、少しだけその子に気をかけるようにした。
他のみんなは気づかなかったみたいだし、キノコのおじさんに聞いても知らないって言ったから、遊びには誘わなかった。
みんなから来てくれるから誘い方も知らないし、あの子がどんな遊びが好きかも知らない。
だからせめて、あの子のことを考えることにした。
しりとりとかの言葉遊びの時にこっち見てることが多いかも。
音楽も好きかもしれない。
体を動かすのはあんまり好きじゃなさそうかな。
まあるいうなってるのは落ち着くからかも。
みんなのいないときも、あの子のことを気にかけるようになった。
そうしていたら、みんなはそのうち来なくなっちゃった。
・・・来ないんじゃなくて、いるんだけど声をかけてこないんだ。
無視してるんじゃないかと思ったけど、
フクロウのおじさんは話しかけたら普通に話してくれるし、うさぎさん達は遊びに誘ったら、一緒に遊んでくれるし、カッコいいお魚さんは見守っててくれるし。
もう、遊びの誘い方も覚えたし話すのもちゃんとできる。
みんなが見守ってくれてるのもきっとそういうことなんだ。
思い切って、きっと僕の想像じゃないあの子に声をかける。
「あなたは誰?」
2/19/2025, 10:50:42 AM