「寒くなってきたな。今日の晩ごはんは何にしようか」
「温かいものがいいよね。パイシチューとかどう?」
「美味しそうだな。一緒に作ろう」
フェリーンとクランタ。彼らは種族も出身も違うが、再びひとつ屋根の下で暮らしている。再会するまでに、様々な出来事と長い時間が経ってしまったが、二人はまたこうして家族になれた。
「いっぱい買っちゃった……」
「はは、そうだな。ネイ、それをこっちに」
ジルは彼女から荷物を受け取り、右手を差し出す。彼にとっては当たり前のことになっていた。
「いつもごめんね、ジル」
「いいんだ。俺は騎士であり、お前の従者でもあるから」
彼は今でも後悔し、それを恐れている。
また彼女と離れてしまえば、次は二度と会えないと。それだけは絶対に避けたい。
「ネイ、俺から離れるなよ」
「もちろんだよ、ジル」
決して叶わないと思っていた当たり前の日常。何気ない会話も、手のぬくもりも、壮絶な過去の上に成り立っている。
だが、彼らはそれを微塵も感じさせない。
寒空の下、二人は尻尾と耳を動かす。
隠せない喜びと共に、彼らは家路につく。
『いつか見た夢の続き』
お題
「手を繋いで」
12/10/2022, 10:15:53 AM