二月の冬の空をコンクリートのような殺風景で分厚い雲が覆っていた
忙しなく粉雪が降り続けている
ふと気がついた頃には、踏み固められ圧雪となった冷たい地面にふわりとした雪の羽毛がかけられていた
変わらず厳しい寒さが体に染み入る
やはり冬はこの寒さ故に苦手だ
日が沈んだにも関わらずやや赤みがかったような空を見上げタバコでもふかすようにふぅと白息を吐き出した
凍りついた階段を慎重に上がりガシャガシャと音を立て鍵束の中から目当ての鍵を探す
小刻みに震える手のせいでいささかぎこちない手つきで鍵を開け、冷え切った部屋と対面する
ただいま
誰もいはしない空虚な空間に以前の思い出をなぞるかのように声をかける
そうするたびに彼女と過ごした日々を思い出す
冬の殺伐とした雪景色でさえ、あの生活の中では純白のドレスのように美しく映ったものだった
いつかドレス、いや白無垢も捨てがたいがそれを纏った彼女を見つめて綺麗だよなどとありきたりなセリフを言って、しばらくした後互いに吹き出すような日を夢想していた
彼女の纏う最初で最後の純白を見ることになったのも今日のような細かな雪が粛々と降り続く夜だった
覗き窓から覗く彼女の白い柔肌を降り積もる雪が隠してしまって彼女から音を取り去ってしまったかのように思えた
白と静寂に塗りたくられた暗闇が今までにないほど残酷に思えた
記憶の中の彼女の温もりがその冷気に奪われてしまうのではないかと恐ろしかったし、無情にすぎていく日々に彼女との思い出が埋もれていってしまいそうで悲しかった
寒さの厳しい冬の日にあの温かだった日々の生活をなぞるのは私だけの秘密だ
彼女の温もりを失わないように
2/7/2025, 3:25:48 PM