崩壊するまで設定足し算

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▶16.「はなればなれ」

15.「子猫」
14.「秋風」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬

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博士によって作られた人形は、
歴史はあるものの長期に渡った戦乱により文明が後退した国にて、
人間社会に紛れて根無し草の旅を続けている。

その収入源は主に薬草採取であるが、たまに手紙配達も受けている。
今回引き受けたのは、大きな町を挟んで向こう側に嫁入りした娘に宛てた小包。

通信技術は戦乱により途絶し、郵便業はあるにはあるが、窓口があるのは中心部の街ばかり。村や町では通りかかった旅人や商隊に手紙や小包を頼むことが多い。出稼ぎや嫁入りなど、はなればなれになった家族を繋ぐ重要な連絡手段である。

「では、よろしくお願いします」
「ああ、頼まれた」

直接顔を合わせやり取りをするのは露見のリスクがあるものの‪、
✕‬‪✕‬‪✕‬は、頼まれたものは出来るだけ引き受けるようにしている。

唯一の親とも言うべき博士は既に亡く、血の縛りもなければ土地にも縛られていない。何なら今すぐにでも人間社会から離れることだって可能な人形にとって、家族とは理解の及ばぬものであり、だからこそ知る価値があると‪✕‬‪✕‬‪✕‬は見込んでいる。

人形は小包を丁寧に背負い袋へ入れ、次の町に向かって歩き出した。

11/17/2024, 8:21:35 AM