この季節の、黄昏時に見える一番星が好き。
西の空、夕日が沈む前のオレンジと、夜の帳を知らせる青。その中間色として挟まれた、青の絵の具を薄く薄く仕上げたような色の中で、一点の輝きを放っているあの星。グラデーションを描く空の色。悠然としていて、それでいて、物憂げな雰囲気を漂わせる黄昏時。ふと郷愁を抱く。そういう時は、視線を星へ縫いつけたまま、少しだけ情感に浸ってみる。息吹を感じて、風に運ばれてくる土の匂いだったり、鼻腔をかすめる、どこかの晩御飯の匂いを「すんませんね」と思いながら、肺いっぱいに吸い込む。そうしたら、尖らせていた神経が、どんどん緩んで、肩の力を抜けていく。なぜだか私は孤独じゃないように思えて、寂寞感をも手放せる。それどころか、実体のないものに、励まされているような錯覚さえ覚えてしまう。不思議だ。孤独を好き好んで選んだのは自分で、本来ならば寂しくなるような雰囲気にも関わらず、不相応な感情を抱いてポカポカしている。やっぱり、人間って不思議だ。
3/11/2025, 11:44:31 AM