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タイムマシーン


「あのさ、タイムマシンに乗ってやって来た、って言ったら信じてくれる?」
君はそう言った。重苦しさの欠片もないような声で、口元には笑みを浮かべている。
「はい? 冗談でしょ?」
いつものようにからかわれたか、とそう聞き返せば、君はますます笑みを深めた。
「本当だよ?」
口元は確かに笑っているのに、そのたれ目がちな目がいつもより真剣な気がして、少しだけドキリ、とした。
「じゃあ、もしそれが本当だとして、未来からやってきたってわけだ」
「ほう?」
「だって過去にタイムマシンがあったら、今ごろみんな使ってるでしょ? だから君は未来から来たってこと」
「ま、そうだね。未来から来たよ」
「何のために?」
「……何のためだと思うー?」
「これって当てていいやつ? なんかパレちゃいけないんじゃないの、こういうのって」
「バレていいから話してるんじゃん。というか頼まれたんだよ」
「誰に?」
「このタイムマシンを作った人に。こんなもの作るなって、過去の自分に釘をさしておきたいんだって」
「それって、本当に私が聞いていい話か?」
「もちろん、だって君に頼まれたんだもん」
「え……?」
「タイムマシンは無事に完成する。でもね、それを披露する場で悲しい事件が起きたの。罪のない人々の命が奪われ、残された人々はこんなもの作らなければ、こんな日にはならなかったのに、と君を責めた。だから君は言ったんだ。『過去の私を止めてくれ』って」
頭がついていかない中、君の笑顔がこの場にはふさわしくなくて、なんだか身構えてしまう。
「だから君は私を送り込んだんだよ。人間ではないから、もしタイムマシンがうまく作動しなくても死ぬことはない。人間ではないから、君のこともあっさり殺せる。じゃあね、マスター」
「まっ!」
最後に君にマスターと呼ばれた瞬間思い出したんだ。小さい頃に描いた女の子のロボットの絵を。思えば、その絵の女の子もたれ目だった気がするが、流れ出る血がどんどんと思考することを奪って、いった。

1/22/2023, 2:09:46 PM