お題《お祭り》
風の言の葉で歌う涼やかな旋律。
それが、人の子を呼ぶ。
カラカラ廻る朱い風車。
青い狐の青年と人の子である、小さな娘。
――拾わなければよかった。
今さら後悔するのはずるいのだとわかってても、もう遅い。憂鬱で悲壮ただよう青年に娘は、風車を指差し楽しげに言った。
「あかい風花きれいだねぇ」
「……風花は、そういう意味じゃないだろう」
「えー? 風に廻る花だよ。ほら」
カラカラ……。
「まあ、たしかに」
綺麗なものだけ集めた、祭り。あやかしも人の子も――結局は好きなのだ、美しく儚いものが。
迷わぬように、その小さな手を引いて、青年は果たしてこの娘が帰れるだろうかと見つめた刹那――目が合った。
「いいの。この夢が終わらないのなら、それでも。だってまだ、お兄ちゃんと一緒にいたいから」
7/28/2023, 5:19:53 PM