バサバサと渡り鳥が空へ旅立つ。
辺りを見回しても、木と湖と小さな村しかない森に少年達の啜り泣きが響く。
その少年達に囲まれた穏やかそうな美しい青年も困ったような笑顔を見せつつ、目にうっすらと涙を浮かべていた。
「うぅ〜、にいちゃん行かないでよ〜」
青年を取り囲んでいる少年の一人が声をあげると、他の少年達も次々に声をあげる。
青年は困ったような笑顔をさらに深くすると、助けを求めるように、黒髪の可愛いらしい少女を見た。
少女は青年の様子を汲み取ると、優しげな笑顔で少年達を宥める。
「寂しいのは分かるけれど、見送るときくらいは笑顔 で送り出してあげましょう?」
柔らかな口調か、それとも少女の言い分に納得したのか、少年らがそれぞれ頷くと、青年に元気な笑顔を向けた。
青年はその様子に笑顔を見せると、旅に持ち出すトランクを、ギュッと握り締めた。
その笑顔には、感謝と必ず帰ってくるという決意が密かに込められていた。
そんな青年を、少年達と少女はその背が見えなくなるまで、笑顔で見送っていた。
次の年の春、柔らかな風と歓喜の声に包まれた渡り鳥は、どこかでそっとなくのであった。
#渡り鳥
5/29/2025, 10:23:44 PM