川柳えむ

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 神様に恋をした。

 初めて見た彼は、画面の向こうで一生懸命に歌って踊り、そして、弾けるような笑顔でこちらに向かって言った。「君に最高の笑顔をあげる!」
 その瞬間、世界は光り輝き、私は恋に落ちたのだ。
 本当に笑顔をくれた、あなたはまるで神様のよう――いや、紛う方なき神様だ。
 友人達には、アイドルのリアコとかやめてよーなんて、笑いながら言われるけど。そして私も、そんなんじゃないよーって、同じように笑いながら返すけど。
 彼は、私にとって、神様で、心から好きな大切な人なんだ。

 初めて行ったライブハウス。ファンクラブの中でも抽選で当たった人だけで、いつものライブハウスよりも規模の小さなもの。
 その分、とても近くて。画面越しだった神様が、こんなにも近くて――キラキラと眩しかった。
 刹那、目が合う。彼は最高の笑顔を見せてくれた。
 ライブ後の握手会、初めて触れた手。
 震える声で「いつも応援しています」となんとか伝え、そっと手紙を差し出した。
 「ありがとう!」彼はまた笑顔で受け取ってくれた。

 初めて書いたラブレター。愛をたっぷり詰め込んだラブレター。
 あなたは、どんな気持ちで読んでくれるかな?


【熱愛発覚! お泊まりデート】

 彼の名前が日本中を駆け巡った。
 お相手は有名女優。
 彼が出したコメントは「真剣にお付き合いさせていただいております」――。

 あんなに光り輝いていた世界が、今はもうこんなに暗い。
 真っ暗な部屋に戻り、ベッドに突っ伏し、ぼろぼろと零れる涙は枕を濡らした。
 私が今どれだけの気持ちを抱えているか、誰も知らない。この苦しさは、誰にもわからない。

 初めての恋でした。
 あなたを本当に愛しています。
 笑顔をくれてありがとう。
 あなたは私の神様です。

 私のこの恋心は――


『神様だけが知っている』

7/4/2023, 11:18:35 AM