昔から、本音を言うのが苦手だった、
「あれがしたい」「これがいい」「それは嫌だ」
そんな簡単なことが言えなくて、周りに合わせることは一人前で。
自分を出さない方が大体上手くいくから。
本当の自分を見せなければ傷つくこともないから。
ずっと、そうやって生きてきたのにーー
「あんたはどうしたいんです?」
風変わりな彼が、私の目を見てそう問いかける。
いつも通り、周りに合わせて取り繕っていたのに。
私の意見なんて、伝えたところで大したものじゃないのに。
「わ、私は……」
本音を言おうとすると、声が震えて、言葉が詰まる。
今まで自分を出してこなかった罰だろうか。
「ゆっくりでいいですよ」
それなのにいつも、嫌な顔ひとつせずに私の言葉を、正直な気持ちを聞いてくれる。
「あんたのアイデアのおかげで助かりました。ナイスです」
私の考えをまっすぐに認めてくれる。
そんな彼に伝える、嘘偽りのない、私の正直な気持ち。
「私を見つけてくれてありがとう。あなたがいてくれてよかった」
お題『正直』
6/2/2024, 3:44:03 PM